非中医学的食物繊維考
『天地人』---天と地の間に人は生きている。
自然の中で暮らしている人間は、自然の影響を受けていると考える中医学では、物を全体でとらえます。
食物繊維などという、食品の中の一部分の成分を考えることはありません。
エッセンスだけを取り出して論じる西洋的な考え方は、どうも馴染めませんが、現代栄養学の中でも食物繊維のとらえ方は非常に参考になります。
食物繊維といわれると、繊維分の多い野菜を思い浮かべ、それを摂取すると便の量が増えるので大腸ガンになりにくいぐらいしか認識がありませんでしたが、
『食事指導ABC』日本医事新報社によると、
食物繊維は、
1.保水性とゲル形成能により便容量が増えるので、腸管内通過時間が短縮する。不足すると、便秘により腹圧が上昇し、静脈異常、横隔膜ヘルニア、さらに腸管内圧上昇で、腸憩室症、虫垂炎を起こしやすい。
2.不足すると、腸内細菌変化や胆汁酸の代謝変化で発癌物質が増加し、便も停滞すると、腸壁と発癌物質の接触が増え大腸ガンになりやすくなる。
3.食事の量を増やしたり、脂肪の吸収を抑制するので、高脂血症、虚血性心疾患を予防する。
4.胆汁酸の再吸収を抑制し、排泄するので、肝臓でのコレステロールから胆汁酸への分解が亢進し、高コレステロール血症や胆石を予防する。
5.食後の血糖上昇を抑制するのでインシュリン分泌が減る。不足するとエネルギー過剰状態になり血糖上昇やインシュリン分泌が亢進するので、肥満や糖尿病になりやすい。
胆汁酸は脂肪を取り込んで排泄されるので、再吸収されると脂肪を吸収することになるようです。
良いことずくめのようですが、もし過剰に食物繊維をとると、吸収障害をうけるので、不足傾向にあるカルシウムや鉄がさらに不足するので、骨粗鬆症や貧血になりやすいということです。
まあ、食物繊維を取り過ぎる場合より、現代の日本人はとらなさすぎの害の方が大きいと思いますので、伝統的な和食を積極的にとることをお薦めします(自戒も含めて)。
穀類、いも類、種実類、豆類、きのこ類、海草類には、食物繊維が多く含まれています。
ちなみに、きのこ類と海草類は、中医学的にも癌に対する予防食であり、治療食でもあります。