中医学的治療の選び方
中医学の古典である『黄帝内経・素問・異法方宜論』には、推拿・鍼・気功・湯液・導引などが中国のどの地方から発展したかが記載されています。
東方之域、天地之所始生也。魚塩之地、海濱傍水。其民食魚而嗜鹹。皆安其処、美其食。魚者使人熱中、塩者勝血。故其民皆黒色疏理。其病皆為癰瘍。其治宜砭石。故砭石者、亦従東方来。西方者、金玉之域、沙石之処、天地之所收引也。其民陵居而多風、水土剛強。其民不衣而褐荐、其民華食而脂肥。故邪不能傷其形体。其病生於内。其治宜毒薬。故毒薬者、亦従西方来。
北方者、天地所閉蔵之域也。其地高、陵居、風寒冰冽。其民楽野処而乳食。蔵寒生満病。其治宜灸焫。故灸焫者、亦従北方来。
南方者、天地所長養、陽之所盛処也。其地下、水土弱、霧露之所聚也。其民嗜酸而食胕。故其民皆至理而赤色。其病攣痺。其治宜微鍼。故九鍼者、亦従南方来。
中央者、其地平以湿、天地所以生万物也衆。其民食雑而不労。故其病多痿厥寒熱。其治宜導引按蹻。故導引按蹻者、亦従中央出也。
砭石は東方、毒薬は西方、灸は北方、九鍼は南方、中央は導引・按蹻、と書かれていますね。
それぞれの治療方法の長所や短所を知っていると、この症状だったらこの治療方法が最適なのではないかと選ぶことができます。
それでは、頸椎症ならどうでしょう。
総合治療が一番効くような気がしますが、日本でそれを行える治療院は非常に少ないのです。
黒龍江中医薬大学の外来での研修では、先生は推拿の手技の一つであるバン法で患者さんをどんどん治療していました。
それがドンピシャ決まれば回復が早いのですが、バン法は結構危険技なのです。(私は、これで頸椎症が出てしまったのです。)
私は、結局鍼で軽快させることができました。
推拿(もちろんバン法抜き)だと皮膚の表面に起きる摩擦で何だか痒くなって来るし、深部に欲しい刺激が足らなかったからです(皮膚に摩擦が起きないよう、しっかり推拿できる方もいらっしゃいます)。
人によっては、鍼治療そのものが苦手な方もいらっしゃることでしょう。
そういう方にとっては、それがいくら最善でも二の足を踏んでしまうでしょう。
漢方薬でも、蝉退(セミの抜け殻)が入っているものだと知っただけで、別の薬に替えて欲しいという方もいるとか。
先生は、蝉退入りの方がこの人には効くんだけどなあと思いつつ、別のものに替えたそうです。
漢方薬も、発熱しているのに誤って(たぶん自分の家にあったのだと思います。中国の事例。)附子理中丸を飲み、高熱になったりしたケースをみると、弁証を誤るとかえって症状がひどくなることもあります。
そんなときは、自然治癒力を高める方法である鍼や推拿が適しているのかな、と考えることがあります。
それに、鍼や推拿も受けるとだるくなったりするので、重病人には受けられないケースも出てくる、それなら気功が良いのでしょうか。
気滞で気が滞っている人に対する漢方薬もありますが、気が滞っているのなら直接気を動かすことができる気功が適しているとも思えますし、逆に打撲したらそのままにしておかないで、瘀血を早く散らすことができるように漢方薬を飲んだ方が良いのではないかとも。
その人の症状や向き不向きによって選ぶ治療方法は変わっていくと思いますが、中国での治療は、
総合的に治療してもらえるのは早く治したい患者にとっては嬉しいけれど、病院(黒龍江だけかもしれませんが)の料金システムにより、治療方法が増えると、それぞれに料金がかかるのです。
医師の先生方も人の子、病院側の利益も考えると自然と総合治療になるようです。
けれど、日本と比較すると漢方薬の値段といい、メチャ安です。