最近の授業は、薬膳は料理としてではなく、療法の一つとしてという方向に向かっているような気がします。
薬膳というと、料理か、医療か、という『食』と『医』の中間にあるわけですが、一般的な日本人が考える『薬膳』は、体に良いおいしいもの(ひょっとして、体には良いけど薬臭いとか思っている人もいるかも)というイメージが多いのではないでしょうか。
病気とまではいかないまでも、健康だとははっきりいえず、何かと不調を抱えている、そんな人にお薦めの食事、それが薬膳ではないでしょうか。
『未病(まだ病気とはいえず状態のこと)』を健康に導く、そんなお食事、それがおいしかったら、誰でもいただきたくなるというもの。
しかし、『食療』といわれる、『已病(すでに病気の状態)』に対する食事は、かかってしまった病気を治すために、薬を入れた料理が多くなります。
食品だけで作られる料理は副作用がないので、長い間食べることができますが(ただし偏食はだめよ)、中薬の入ったものは症状などに合わせているため長く食すことはできません。
逆にいうと、すでに病気でその症状に効果的な食事をするためには、中薬が入っていないと効果を発揮するのはむずかしいし、食品だけの料理では長く食べることができる反面、症状をとるには時間がかかるということです。
病気の人は西洋薬を飲んでいる人が多いし、その補助的な食事ということで『食療』は考えられています。
中西結合(中国医学と西洋医学の合体)を意識する現代中国では、昔ながらの伝統医学である中医学の知識を西洋的な実験やその食品の成分などを明らかにして、伝統的な学問の裏打ちをしようとしているようです。
ですから食療を学ぶにあたり、西洋医学の知識が多分に入ってきます。
中国ではできるのでしょうが、西洋医学の補助としての薬膳て、日本ではむずかしいような気がします。
病院の食事などは、栄養士の方が西洋的な知識を使ってメニューを作成しているわけですし、入院はしていないけれど病気の人に対しての食事指導に、中薬の入ったメニューを教えても、それを実行に移せる人がどれだけいることか。
まして、薬剤師でなければ、一般人が中薬の入った料理を教えたら、薬事法にひっかかる中薬がいっぱいあるのではないでしょうか。
だいたい、薬膳に良く使われる中薬以外は、おしいくないものが多いので、病気でない人には受け入れにくいものが多いし、おいしくなければ薬膳ではないと習った私には、体には効くかもしれないけどおいしくないものは食指が延びません。
おいしいものというのは、それだけで脳が受け入れ態勢を作るので、体にもスムーズに取り込まれる、そこのところが一番大事なことです。